夏がテーマの浮世絵で遊ぶ
古美術商に努めていた頃から、私は浮世絵という表現には少なからず違和感を覚えています。
風俗画、という呼ばれ方もありますがそれでもまだ違和感は拭い去れません。
どちらも当時の生活を生き生きと描き写した、それも並々ならぬ表現方法を用いて描かれた絵画であると、私には思えます。
泰西名画である印象派、つまりimpressionistとは古典的な写実主義から脱却して作者の見たもの、感じたものをキャンバスに表現しようとした画家集団だったことは間違いありません。
我が国における、いわゆる浮世絵という絵画は、まさにそれを先取りした画法だったのではないのでしょうか。
お召し替え 二階の禿 金魚追い
(おめしかえ にかいのかぶろ きんぎょおい)
喜多川歌麿 作「金魚遊び」を題材に。
この時代に漆塗りの升に金魚を放して遊べるなどというのは、評判の高い花魁だったのでしょう。
禿(かむろ / かぶろ)の慰みにと、着替えさせて金魚を追わせ、夏の暑さを凌ぐ一コマか。
(禿というには出で立ちや髪型に少々無理がありますが、そこは平にご容赦を)
次は歌川国芳 作 銘酒揃を題材に
色男 西瓜穿く 指に惚れ
(いろおとこ すいかつらぬく ゆびにほれ)
女性とはいえ、そこは江戸っ子。
西瓜の種を弾くのもじれったい。思わず指が刺さってしまい西瓜を突き抜いてしまう羽目に。
整った瓜実顔、汗で乱れ流れる髪、首に掛けた絞りの手拭い、小さい唇。
そんなことよりも、この女性の有様を如実に物語る、この西瓜を貫いた指にさすがの色男も目を留めた。
団扇の画であるがゆえに、下部に蒲鉾型の白抜きがあるが、これがまたこの女性のあらわな太腿に見えてしまうのは、国芳のなせる画力の賜物か。
というわけで、夏を題材にした浮世絵で俳句を二首。
お目に止まれば、お慰み。草々
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